歯の割れる（破折）リスクが上がります！
神経を取った歯、お口の中にある？
歯の神経を取った歯は、枯れ木のようにとてももろくなります。自分の歯の神経がしっかりしていれば歯が割れることは、そんなにありませんが、神経を取った歯は『歯の破折』のリスクが一段と高くなります。
歯の破折とは、歯が割れたり折れたりしてしまうこと。上の方が割れただけなら修復治療ができます。しかし歯根のほうまで真っ二つに割れてしまうことも多く、こうなるとまず治療は困難で、抜歯になり歯を失うケースがほとんどです。『歯を失う』などどというと、シニア世代の話だと思われがちですが、35歳以上のかたが歯を失うケースの10%が歯の破折であることがわかっています。とくに、若くて体力のあるかたに歯ぎしりをする癖があると、無意識で行うことだけに制御がきかないため、猛烈な力が歯にかかります。『朝起きたら急に歯が痛くなっていた』と訴えて来院した若い患者さんの歯が真っ二つだった、というようなことも起きるのです。
神経を取った奥歯、割れるリスクは７倍！
なかでも割れやすいのが、神経を取ってある歯（失活歯）です。神経のある健康な歯と比較したコホート研究によると、神経のない歯の喪失リスクは前歯では1.8倍、奥歯でなんと7.4倍にもなるという驚きの数字が出ています。 むし歯で炎症を起こして壊死した神経を取るには、歯の真ん中をくりぬくように歯を削らなければなりません。細菌に汚染された神経をきれいに取るには削る量がそれなりに増えるため、歯は弱くなり、破折のリスクが上がってしまうのです。 日ごろからスポーツをたしなむかたの噛む力は強く、体力がなく噛む力も弱いかたの歯よりも破折のリスクにさらされやすいことは、容易に想像できると思います。若く元気なかたの中には、まったく治療したことのない健康な歯（神経を取っていない歯）までへし折ってしまうかたもいます。
就寝時にナイトガード、定期受診をお忘れなく
破折を防ぐためにもっともも重要なのは、力のコントロールです。効果が高いのが就寝中に使う歯科のナイトガード(マウスピース）。就寝中に無意識でしてしまう歯ぎしりから歯を守ってくれます。またウェイトトレーニングに取り組んでいるかたの場合、グッと強く噛みしめるので歯に負担がかかります。筋肉を鍛えるたびに歯が傷んでは困るので、トレーニング用のマウスガードを使いましょう。 そして、忘れてならないのが歯科への定期検診です。とくに神経を取った歯のあるかたは、その歯に偏った力がかかっていないか、噛み合わせのチェックを受けましょう。歯はすり減ったり移動するので、知らないうちに噛み合わせが変化して過剰な力がかかりやすくなってしまうことがあるからです。また、神経を取って被せ物をしてある歯は、むし歯になっても痛みを感じず気づきにくいです。知らないうちにむし歯が入り込んで歯が傷むとますます破折しやすくなるので、大事な歯を失わないために、必ず定期検診をお願いします。
